合理的配慮(テキスト)

合理的配慮(テキスト)

合理的配慮

資料 合理的配慮について

1 合理的配慮とは
 合理的配慮とは,障がいのある人が日常生活や社会生活で受ける様々な制限をもたらす原因となる社会的障壁を取り除くために障がいのある人に対し,個別の状況に応じて行われる配慮のことをいう。
 
 
 合理的配慮の基礎となる環境整備のことを「基礎的環境整備」という。以下は両校校舎の施設・設備における基礎的環境整備についての一例である。

1.点字付き各階案内板(視覚)
 教室数が多いため,案内が複雑にならないように地図内の教室に番号をふり,その番号にあたる教室名を表に示している。文字は白黒反転文字を使用している。
また,ざらつき感のある手触りで長い廊下を表現することで,枠線で表現した箱型の教室と触りわけができるようにしている。

2.視覚障害者誘導用ブロック(視覚)
 視覚障がい者が足裏の触感覚で認識できるよう,突起を表面に付けたもので,視覚障がい者を安全に誘導するために地面や床面に施設されているブロック。点字ブロックの名で知られている。進行方向を示す「誘導ブロック」と,危険箇所や誘導対象施設等の位置を示す「警告ブロック」の2種類がある。
 また,視覚障害者誘導用ブロックに「黄色」が多いのは,弱視者が視認しやすくするためである。

3.音声装置(視覚)
 正門,東門,玄関,生徒用昇降口に,入り口を案内する音声装置のセンサー及びスピーカーを設置している。案内アナウンスを流すには2種類の方法がある。
①「シグナルエイド(日常生活用具給付等事業候補品)」使用
 シグナルエイドをもっていると,スロープを上がりきった時に,天井に設置されたセンサーが反応し,シグナルエイドが「ピピッ」と鳴る。そこで,シグナルエイドのスイッチを押すと,天井からアナウンスが流れる。
②磁気を仕込んだ白杖を使用
 「音声誘導用ネオジシート」を巻いた白杖か,「マグネット内蔵石突き」がついた白杖で,特定の警告ブロック下に埋設した磁気センサーの上を通過したとき,白杖の磁気の移動を察知してセンサーが反応し,天井からアナウンスが流れる。

4.調光機能付きLED照明(視覚)
 徳島視覚支援学校の各教室の照明は,必要に応じて照度を調節することができる。
まぶしさを感じることで見えにくい幼児・児童生徒は,遮光眼鏡をかける等の自分でできる工夫の他にも,環境の入りをとして,照明の照度を落とす,カーテンをひく,光が差し込む側についたてを置くこと等が有効である。
薄暗いと見えづらい幼児・児童生徒の場合は,照明の照度を上げる,自分の影で手元が見えにくくなることを避けるために電気スタンドをつける等の工夫が有効である。
このように,調光システムとその他の工夫を合わせて,幼児・児童生徒に合ったよりよい環境を整え,学習効果を上げることが大切である。

5.床と階段面の材質の違い(視覚)
 廊下から階段室に入ると,床面が紺色のカーペットに変わる。床の色や材質を変えることで,階段ゾーンに入ったことがわかるようにしている。階段の起点と終点には,紺色のカーペットに対して,注意喚起用の黄色い点状の視覚障害者誘導ブロックを敷いている。

6.階段の配色(視覚)
 階段は,踏み面(白色)と蹴上げ(紺色)のコントラストをはっきりすることで,上るときに1段1段を認識しながら上がることができるようにしている。

7.階段でのLED照明(視覚)
 階段の1段目と最終段に赤色LED照明が埋め込まれており,昇降いずれの場面にも,見やすい配慮をした階段もある。

8.手すりの工夫(視覚)
 身体の大きさに応じて使い分けができるよう,高さの違う2種類の手すりが用意されている。視覚障がい児(者)にとって手すりは,「手すりに触って」「手すりに沿って」「手を滑らせて」歩行する,安心のための“ガイド”としての役割がある。
 階段の手すりは,上り(下り)始めの位置と下り(上り)終わりの位置を判断するために重要な役割を果たしている。手すりの角度が変化する位置(水平部から斜め部への変化位置)で,階段が始まる(終わる)と容易に認識でき,最初のステップや最後のステップの準備に入ることができる。

9.文字情報システム(聴覚)
 通常は,お知らせやニュースを流しており,緊急時には状況や発生場所,避難経路等の情報を流している。

10.四色ライト(聴覚)
 四色ライトは徳島聴覚支援学校エリアに設置されており,赤は火災発生時,橙は授業開始時,緑は授業終了時,青は不審者対応時に点灯する。

11.フラッシュライト(聴覚)
 火災発生時に閃光で非常事態を知らせる。

12.階段周りの透明な壁(両校)
 階段と廊下の壁を透明にすることで,衝突防止につなげている。

13.階段の踊り場の鏡(聴覚)
 人の気配を感じやすくし,衝突防止につなげている。

14.多機能トイレ(両校)
 様々な障がいがある人が使いやすいよう,多機能トイレが設置されている。

15.教室等の文字表示(両校)
 白字に黒い背景は徳島視覚支援学校の教室。黒字に白い背景は徳島聴覚支援学校の教室。オレンジ色の背景は両校共有の教室を示している。

16.スロープ(両校)
 車椅子を利用している幼児・児童生徒が使いやすいよう,スロープが設置されている。

17.エレベーター(両校)
 車椅子を利用している幼児・児童生徒が使いやすいよう,エレベーターが設置されている。

 


2 文部科学省 障害種別の学校における「合理的配慮」の観点(案)より(視覚障がいに関する部分を抜粋し,加筆している)

 


1.「合理的配慮」の観点(教育内容・方法)


a 教育内容


配慮の方法1 学習上又は生活上の困難を改善・克服するための配慮
 その障がいによって,日常生活や学習場面において様々なつまずきや困難が生じることから,小・中学校等の通常の教育課程による教育にとどまらず,障がいによる学習上又は生活上の困難を主体的に改善・克服するために必要な知識,技能,態度,習慣を養うことへの配慮を行う。

配慮の具体例1
(1)見えにくさからの学習上または生活上の困難を改善・克服する配慮の例
①座席を前にする
②教材や掲示物の明確なコントラストや文字サイズの配慮
③わかりやすい板書
④採光の調整
⑤見えやすい用具(太字のペン,表示が大きなものさしなど)や視覚補助具(弱視レンズ,拡大読書器など)の活用
(追加)
①⑤視覚補助具の練習をする場合(を活用している場合),黒板と座席の距離を近づけすぎず,一定の距離を確保する必要がある。
単眼鏡を使用する場合,板書の文字の大きさが大きくなりすぎないよう適切な文字の大きさを確認しておく。
②コントラストを考えることと併せて,配色にも注意をする。また,見え方によっては,拡大するとかえってわかりにくくなる場合もあるため,眼疾患や見え方の把握をする必要がある。
③本人の見えやすさを聞きとり,見えやすい色のチョークを使用する。色で書き分けるよりも囲みや線などを使用して,わかりやすい板書にする。
④様子や意見を参考にして,カーテンの開閉,教室の電灯の点灯また消灯,調光,机用の蛍光灯の設置などの設定をして,明るさの調整をする。
⑤ペンの色や太さは,見えやすさに合わせたものを使用する。弱視レンズは,視力等により適した倍率のものを使用する。目を近づけて見たり文字を書いたりする必要がある場合は,書見台(傾斜机)を用い,身体的な負担を軽減することが効果的な場合がある。市販のノートの罫線の色や太さでは見えにくい場合は,弱視用のノートや自作のノートなど,罫線の色や太さに配慮する。
(2)見えないことからの学習上又は生活上の困難を改善・克服するための指導を個別に行うとともに学習活動に活用する(触察や点字,空間概念,白杖を使った歩行などの指導)


配慮の方法2 指導目標の設定
 法律等で定められている教育の目的,学校の目的,学習指導要領に示されている各教科等の目標を前提とし,教育委員会の規則等に従い,地域や学校及び幼児児童生徒の実態に即した学校における指導目標を設定するとともに,幼児児童生徒の障がいの状態に応じて,評価規準の調整,指導方法の変更,学習内容の調整,さらには指導目標・指導内容の個別設定を行う。

配慮の具体例2
 視覚障がいを補って学ぶことを踏まえて指導目標を設定し,評価規準を調整する。(点字での読み書き,触察での図や立体の理解などを配慮する)


配慮の方法3 学習内容の変更・調整
 一人一人の障がいの状態に配慮し,学習内容の変更や学習の量,時間の調整を行う。

配慮の具体例3
 視覚障がいに配慮した学習内容の調整や変更などの例
①詳しい説明(状況や対象物の様子,変化)を加える
②十分な時間延長をする
③図示がある教材は工夫して点字教材を作成する
④漢字は意味や使い方に重点を置いて学習する
⑤筆算はそろばんを使う
⑥実験は結果が音でわかるようにする
⑦観察は触ることができるようにする
⑧体育は視覚障がいに応じた内容で行う
⑨安全を確保する
(追加)
①たくさんの言葉で伝えると,かえってわかりにくくなる場合もある。短い言葉で整理された情報を伝える方がわかりやすい。本人が何をどこまで理解しているか,質問等で確認をした上で,必要なことがらを補う方法もよい。
②拡大された文字や点字,点図等を読み取るには時間がかかるので,学習のポイントをしぼることも必要になる。
③晴眼者が見る図をそのまま点図にするとわかりにくいので,どの方向からの図であるかを示すか,複雑な場合は書き直す,情報を整理するなどの工夫が必要になる。
④点字使用者の場合,墨字で漢字を書くことはないが,パソコンなどで文書を作成したり読んだりする場合には漢字の読みや意味,熟語の知識が必要になる。
⑤計算の過程を確認できるようにするために,そろばんを活用する。
⑥音声や音の変化で確認できる用具やアプリ等を活用する。
⑦観察に適した内容に変更したり,明るさや高さの調整など環境を整えたりする必要もある。触察する教材は可能な限り本物を用意し,大きさや感触も含めて観察することができるようにする。
⑧ルールや使用する用具の工夫をしたり,競技を変更して行ったりする。また,音源を提示したり使用する用具の色の組み合わせにも配慮したりする。
⑨近づけて見られないものは,拡大読書器やモニタに映して見る。体育で,衝突を防止するために,移動の際の動線を一方向に決める。実験器具の置き場所を決めてから実験を行う。


b 情報保障


配慮の方法1 感覚と体験を総合的に活用した概念形成への配慮
 一人一人の認知特性を把握し,それに応じた感覚と体験を総合的に活用できる学習活動を通じて,概念形成を促進するよう配慮を行う。

配慮の具体例1
(1)模型や実物に触るなど能動的な学習活動を十分にできるように配慮する。
(2)学習活動を自分で最初から最後まで行い,手順やポイントの理解を明確にできるようにする。


配慮の方法2 情報保障の配慮
 一人一人の障がいの状態に応じた情報保障を行うとともに,コミュニケーションの方法を検討するなど一人一人に適した配慮を行う。

配慮の具体例2
(1)見えにくい児童生徒に提供する情報の配慮
①小さな文字を使わない配慮
②拡大コピーや,拡大文字を用いた資料の提供
(追加)
①小さな文字だけでなく,視野狭窄がある場合には,大きすぎる文字もわかりにくい場合があるので,適した文字サイズやフォント等を把握しておく必要がある。
②単純に拡大コピーをすると,文字間や行間も広がってしまい,読みにくくなることがある。必要によっては,新しく作り直したり,データの書式の設定を変えたりして対応する。
(2)見えない児童生徒に対する情報の配慮
①聞くことで内容が理解できる説明
②点字及び点図資料
③音声による資料提供
(追加)
①理解しやすくするために,ポイントをしぼった整理された言葉での説明が必要になる。
②墨字の資料をそのまま点字に変換するだけでは不十分。レイアウトや表記の見直しが必要になる。大見出しごとにページを改めて,必要な情報を探しやすくする。また,図をそのまま点図にしても理解しにくい場合は,図を簡略化した上で点図にしたり,図に表されている内容を文章表現に置き換えたりする等の工夫が必要になる。
③チャプタを分けるなどして必要な情報を探しやすくする。


配慮の方法3 認知の特性や身体の動き等に応じた教材の配慮
 一人一人の認知特性,身体の動き等に応じた教材の配慮を行う。

配慮の具体例3
(1)見えにくさに応じた教材の配慮
①視力に応じた拡大教科書の提供
②教材に小さな字を使わない配慮
③拡大コピーした教材の提供
④拡大文字を用いてレイアウト変更した教材の提供
(追加)
①拡大教科書は,検定教科書とはページ割りや配置が異なることを念頭に置いて指導する。また,図や挿絵に関しては検定教科書の方が見やすいものもあるため,拡大教科書と検定教科書を併用することが有効な場合もある。
②視覚補助具の活用状況(能力)に合わせた配慮が必要。
③④単純に拡大コピーをすると,文字間や行間も広がってしまい,読みにくくなることがある。必要によっては,新しく作り直したり,データの設定を変えたりして対応する。
(2)見えないことに応じた教材の配慮
①点字教材
②触察教材(点図,凸図,模型)
(追加)
②何を目的としているかにより,整理した情報を提供する。
触察教材は,一つの素材だけでなく素材を使い分けることでわかりやすさが増す。また,色を付けるなどの工夫をすると弱視者にとっても有効。


配慮の方法4 ICTや補助用具等の活用
 一人一人の障がいの状態に応じて,ICTや補助用具等を活用し,学習の充実を図る。

配慮の具体例4
(1)視覚障がいを補う視覚補助具などやICT活用
①画面拡大や色の調整
②音声ソフトウェア
(追加)
①拡大読書器のモニタの大きさや高さなどにも配慮が必要。まぶしさやコントラストに配慮した設定を行う。
②音声で聞いたときに,勘違いが起こらない表現が必要。
(2)情報収集
① 辞書,辞典などを活用する
(追加)
①大活字のものの活用やデータでの検索など,適した方法を考える。またタッチパネルやキーボード,音声入力など,検索しやすい方法も考える。問題解決的な学習に主体的に取り組めるようにする。


配慮の方法5 学習機会や体験の意図的な確保
 治療やリハビリテーションのため不足している学習や障がいの特性から不足している体験などの機会を補うことができるよう,学習内容・活動を設定する。

配慮の具体例5
(1)見えにくさから気付きにくい事柄を知らせる
①遠いもの
②速く動くもの
③小さなもの
④たくさんの中にあるもの
⑤コントラストのはっきりしないもの
(追加)
①~⑤模型を作る等して,形や色の特徴をじっくりと確認できるようにする。
①③拡大して細部の確認ができるようにする。
②タブレット端末のアプリ等を活用してスピードを落とし,確認しやすくする。
④周囲の情報を整理する。必要な情報を取り出して確認しやすくする。
⑤必要に応じて線を引くなどしてわかりやすくする。
(2)学習できるようにするために機会を作る
①よく見る
②触察で補う
③体験する
(追加)
①適切な倍率の視覚補助具を活用する機会を作る。動くものは,静止画を撮影して見せる。注目すべきポイントを拡大して見せる。
②立体や半立体の触察教材を提供する。効果的に情報を得るため,順序よく触るなどの触察の技術を高める。
③言葉だけの理解にならないように,実際に体験できる機会を作る。
(3)見えないことから気付かないことや理解しにくい事柄を知らせる
①遠かったり大きかったりして触れないもの
②動くものとその動き方
③たくさんのもの
④色の微妙な違いなど
(追加)
①模型等を活用する。
②模型を活用して動き方を確認する。
③基本となるものを取り出し,たくさんある状態とは別に確認できるようにする。
④タブレット端末のアプリ等を活用し,知識として異なる違いがあることを確認。


c 心理面等での配慮


配慮の方法1 他の子どもと比べ時間を要することへの配慮
 障がいの状態により,他の子どもと比べ時間を要することについては,本人の能力の発達を妨げないように,授業や試験について時間等の配慮を行う。

配慮の具体例1
視覚障がいの状況に応じて時間の配慮をする
①複雑な図の理解
②理科実験
(追加)
①②触察や順序立てた理解への配慮。一連の実験の流れを理解した上で,実験を進めるようにする。色の変化等の確認のために機器を用いて結果を調べるようにする。


配慮の方法2 実施が困難な活動への補助や指導上の配慮
 障がいの状態により,実施が困難な活動についての活動内容・方法の工夫,指導上の配慮を行う。

配慮の具体例2
(1)見えにくい児童生徒に,基礎的な練習を十分に行う
①ボール運動や器械運動で個別指導を多くする
②描く経験を多くする
(2)見えない児童生徒に,基礎的な練習を十分に指導する
①走る,投げる,跳ぶなどの体の動き
②基本図形の作図
(3)参加の方法を変える
①陸上競技の伴走
②表面作図器などでの線画
(4)題材を変更して参加できるようにする
①視覚障がい者用ボールゲーム


配慮の方法3 予測できる学習活動の実施など学習に見通しがもてる配慮
 学習予定をわかりやすい方法で知らせておくことや,それを確認できるようにすることで,心理的不安を取り除くとともに,その都度,状況を判断できるようにする。

配慮の具体例3
(1)学習予定をあらかじめ知らせておく
(2)終了時のまとめを十分に行う
(3)学習の過程や状況をその都度説明し,状況を判断できるようにする


配慮の方法4 人間関係の構築への配慮
 集団におけるコミュニケーションについて配慮するとともに,他の子どもに対して障がい特性等について理解を深めるような教育を行う。

配慮の具体例4
(1)関わりが受動的にならないよう助言する
(2)聴覚的な手がかりから相手の意図や感情をとらえられるよう指導する


配慮の方法5 心理状態・健康状態への配慮
 障がいの状態と健康状態により指導の内容・方法を柔軟に調整する。障がいを起因とした不安感や孤独感を解消し,自尊感情を高める配慮を行う。


配慮の方法6 自立と社会参加に必要な指導内容の設定
 障がいの状態や年齢を考慮しつつ,人間関係づくり,学校,家庭,地域での役割づくりに配慮する。卒業後の生活や進路を見据えて,一貫したキャリア教育の充実を図る。そのため,体験的活動や就業体験を充実させるとともに,本人が自己選択・自己判断する機会を増やし,自分なりの生き方を考え,主体的に進路を選択できるようする。また,それぞれの発達の進んでいる側面を伸ばすことにより,自分の長所の自覚を促す。さらに,社会適応に必要な技術や態度が身に付くよう指導内容を工夫する。

配慮の具体例6
(1)早期からの人間関係づくりや,家庭や学校での役割づくりに配慮する
(2)専攻科における理療や理学療法に関する教育


配慮の方法7 共生の理念の涵養
 それぞれの障がいについて,周囲の幼児・児童生徒や教職員が理解を深め,配慮や支援の環境づくりを行う。また,障がいの状態により集団活動への参加が難しい時には,集団を構成するメンバーで障がいのある幼児児童生徒の参加の方法を考える機会を設定する。さらに,障がいのない児童生徒が支援する機会を設定する(教室移動,日常生活動作,学習活動,学級の係活動等)。

配慮の具体例7
見えにくいこと,見えないことについての理解
①できることと支援が必要なこと
②配慮や支援の環境づくり

 


2.合理的配慮の視点(支援体制)


配慮の方法1 心理的負担を軽減できる学校・学級における配慮
 障がいのある子どもの不安等の心理的負担を軽減できるよう,全体の学習活動に支障のない範囲で学習環境の整備等を行う。

配慮の具体例1
視覚障がいがあってもわかりやすい環境づくり
①下駄箱,ロッカーなどよく使うものの位置など
②支援できる友達関係づくり


配慮の方法2 障がいに対する児童生徒,教職員,保護者,地域の理解推進を図るための配慮
 障がいのある子どもについて,他の子どもの理解を推進する。必要に応じて,全員に,その障がい特性などについて理解を深めるような教育を行う。教職員,保護者,地域に対しても理解増進を図るような活動を行う。

配慮の具体例2
視覚障がいの状況や使用する補助具や教材について児童生徒,教職員,保護者にわかりやすく説明する


配慮の方法3 関係機関や外部専門家等との連携
 教育センター等地域にある教育資源を最大限活用するとともに,医療,福祉,労働等の関係機関と連携する,あるいは,都道府県等の特別支援教育に係る専門家チームが校内委員会に助言するなどの配慮を行う。

配慮の具体例3
点字図書館など地域資源の活用

 


3.合理的配慮の視点(施設・設備)


配慮の方法1 校内環境のバリアフリー化
 障がいのある幼児・児童生徒,教職員等が安全かつ円滑に学校生活を送ることができるよう,障がいの状態や特性,個別のニーズに応じた環境にするために,スロープ,手すり,便所,出入口,エレベーター等の施設の整備計画時に配慮を行う。また,既存学校施設のバリアフリー化についても,障がいのある幼児・児童生徒の在籍状況等を踏まえ,所管する学校施設に関する合理的な整備計画を策定し,計画的にバリアフリー化を推進することが重要である。

配慮の具体例1
(1)状況に応じ,下駄箱や教室のロッカーをわかりやすい位置にしたり固定したりする
(2)各教室などにわかりやすい目印(色の変化,大きな文字での表示,点字の表示)を付ける


配慮の方法2 発達,障がいの状態及び特性等に応じた施設・設備の配慮
 一人一人の幼児児童生徒の発達,障がいの状態及び特性等に応じた指導内容・方法が十分に展開できるよう,自立活動等の学習指導を支援する様々な教育機器等の導入や施設整備を必要に応じて行う。
 また,幼児児童生徒が,それぞれの障がいの認知特性,行動特性,感覚等に応じて,能力を最大限活用して自主的,自発的に学習や生活ができるよう,各教室等の施設・設備について,見えやすさ,わかりやすさなどに配慮を行う。
 さらに,幼児児童生徒の学習及び生活の場として,日照,室温,音の影響等に配慮した良好な環境を確保するよう配慮を行う。特に,幼児・児童生徒の障がいの状態や特性等に配慮しつつ,その健康の保持増進に配慮した快適な空間とすることが重要である。
 また,幼児児童生徒が心にゆとりをもって学校生活を送ることができ,他者との関わりの中で豊かな人間性を育成することができるよう,生活の場として快適な居場所を確保するよう心のケアを必要とする子どもへの配慮を行う。

配慮の具体例2
(1)視覚障がいの状況に応じて見やすさに配慮する
①教室や階段に点字プレートや点字ブロックなど明確な目印を設置する
②ドアと壁の色を変えるなど
(2)見えにくい児童生徒のための機器をそろえる
①拡大読書器
②書見台など
(3)光の調整を容易にする設備をそろえる
①照度計
②ブラインドやカーテン
③スタンド
④見えない児童生徒の指導のために,視覚障がい者用教育機器,点字教材作成に必要なパソコン機器などをそろえておく

 


3 視覚に障がいがある教職員のための合理的配慮について
 4月の職員会議において,徳島視覚支援学校から徳島聴覚支援学校へお願いしている内容は次の通りである。


1.当事者について
 本校には,幼児・児童生徒はもちろん,教員にも見えにくさがある者がいます。全盲だけでなく,明るくて(暗くて)見えにくい明暗順応の難しさや視野の狭さなどの見えにくさがある弱視者もいます。


2.お願いしたいこと

場面1 話をするとき
こうしてほしい1
(1)「名前を呼ぶ」「名前を名乗る」
 声をかけるときには,誰を呼んでいるかわかるように,名前を呼んでください。そして,誰に声をかけられたかわかるように,名前を教えてください。例)「~さん,○○です」
(2)「話の終わりを明確に」
 話が終わったときや席を外す時などは,「終わります」「戻ります」「退室します」など伝えてください。話し終わったことや立ち去られたことがわかります。気付かず話し続けたり,話の途中なのに別のことをしてしまったりすることが避けられます。
(3)「指示語は使わない」
 説明をする時は,「こっち」「あっち」などの指示語は使わないでください。前後左右など具体的に伝えてください。

場面2 通行をするとき
こうしてほしい2
(1)「右側通行の徹底」
 右側通行の徹底をお願いします。見えにくさがある場合,ぶつからないようにすることや自分の位置の確認のため,廊下右側の壁や手すりを伝いながら歩行します。
職員室を横断する通路は,点字ブロックの右側を通行します。職員室通路や校内の廊下,校舎外の通路は,右側通行をしてください。 これまでに,左側通行したために,廊下の曲がり角,階段室と廊下の境などでぶつかりそうになる危険な場面がありました
(2)「走らない」
 廊下や職員室の通路は走らないでください。急いでいて追い越す際は,「横を通ります」「追い越します」など声をかけてください。
(3)「立ち止まらない」
 通路で立ち止まったり,廊下に集まって長時間話をしたりしないでください。話をする場合は,ふれあいコーナー内(両校共有のスペース)や教室など,通行の妨げとならない場所でお願いします。
(4)「声をかけて」
 目で見て把握することが難しいので,周りの人の声や足音などが周囲の状況を把握する手がかりとなります。廊下を通行する際,すれ違う際は,「おはようございます」「さようなら」など,積極的に声をかけてください。

場面3 ドアの開閉
こうしてほしい3
 ドアは,閉じるか開けるかのどちらかにしてください。中途半端に開いているとぶつかって危険です。ランチルーム,寄宿舎側の出入口等も含めて,気を付けてください。

場面4 ふれあいコーナー
こうしてほしい4
 人を待ったり集まったり,文字情報システムを確認したりする場合は,ふれあいコーナーの中でお願いします。廊下を安全に通行するためにご協力ください。
 また,各階のふれあいコーナー入口は,手で伝う壁や手すりが途切れる構造になっています。そこで,足で伝うことができるよう,廊下とふれあいコーナーの境界線上にマットを設置しています。貴重な手がかりですので,もし,はがれたりずれたりしている時には徳島視覚支援学教教員にお知らせください。

場面5 物の置き場所
こうしてほしい5
(1)「置くとき」
 校内外含めて,短時間でも通路には物を置かないでください。置く場合は,時間と場所を周知してください。また,物を置く場合は,通路からはみ出さないようにしてください。また,玄関や昇降口に靴を脱いだままにしないようにしてください。
(2)「移動させるとき」
 物品を移動させた場合は,必ず元の場所に戻してください。置き場所が変わる場合は,周知をお願いします。ゴミ箱は,右側に燃やせるゴミ,左側に燃やせないゴミと統一してください。変わるとわからなくなります。

場面6 敷地内
こうしてほしい6
 敷地内では,バイクや自転車を降りて押してください。自動車についても,徐行をお願いします。

場面7 業務上
こうしてほしい7
(1)「資料の提供」
 各種書類は,データがあれば音声対応パソコンで読み取ることができます。音声対応パソコンを使用する教員用に資料を準備してください。データは,テキスト形式で作成してください。一太郎形式は対応していません。PDFファイルも読み上げできないものがあります。表は,項目と内容を文章で表してください。また,個別に説明に来てくださってもかまいません。音声での読み取りには時間がかかるので,資料は事前に渡していただけると助かります。
(2)「プリンタの使用」
 見えにくさのある教員も,文書を作成し,プリンタでプリントアウトします。プリンタに文書が残っていると,自分がプリントアウトした書類がどれかわからなくなります。プリントアウトしたら,すぐにプリンタから取るようにしてください。プリントの内容の確認や文字やレイアウトの確認にもご協力をお願いします。

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